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部活動がどのように行なわれていて、その結果体力的にはどのような改善が認められたのかについては必ずしも明らかとはされていない。
われわれは平均的な競技力を有すると考えられる高校バレーボール部の女子生徒を対象に、活動量と体力水準を調査したが11)、バレーボールを行なっていることによって向上したと考えられたのは、全身反応時間と反復横跳の2項目だけであった。これは、毎回の練習時間が短いので、体力全般を向上させるための刺激量としては十分ではないためと考えられた。逆に考えれば、同じバレーボールを行なっていても、競技力が高いところでは活動量が多く、結果的に体力水準が高くなっていることが推測される。そこで本研究では、競技力が異なる高等学校女子バレーボール部において活動量および体力水準を比較し、バレーボールの練習が体力に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。

 

研究方法

1. 被検者

本研究の被検者は、B高等学校のバレーボール部に所属する女子12名(2年生:10名、1年生:2名)であった。あらかじめ顧問教師に研究の目的および測定の方法などを説明し、研究への参加の同意を得た。被検者の選択にあたっては、バレーボールの技術水準が高い者から12名ということで顧問教師に依頼した。最近2年間の競技水準は東京都で8位以内(東京都高校数:464校)であった。練習の頻度は週6日で、放課後の練習時間は約3時間、授業のない日には約6時間の練習を行なっていた。

2. 測定項目

1) 小・中学生における運動歴
各被検者に対してアンケートにより小・中学生での運動実施状況を調査した。調査項目は運動種目、1回の運動時間および週当りの運動回数であった。集計に当たっては、運動を行なっていなかった場合は0時間、0日/週として平均値を算出した。
2) 形態測定
各被検者の身長、体重、大腿囲、下腿囲および皮下脂肪厚を測定した。大腿囲および下腿囲は最大周径囲とした。皮下脂肪厚は上腕背部と肩甲骨下部の2部位について栄研式キャリパーで測定した。
3) 体力測定
体力測定として握力、背筋力、脚伸展力、全身反応時間、反復横跳、垂直跳および全身持久力の測定を行なった。筋力はすべて等尺性筋力を測定した。全身持久力の測定は、自転車エルゴメータ(コンビエアロバイク 75XL)による負荷漸増法で行なった。40Wの負荷から開始し、被検者が60rpmのペダリング速度にあわせられなくなるまで1分毎に10Wずつ漸増した。運動中の酸素摂取量の測定はダグラスバッグ法により1分毎に行なった。運動中に得られた酸素摂取量のうち、最も大きな値をVO2peakとした。
4) 部活動中のエネルギー消費量の測定
カロリー表示のついた歩数計(山佐時計 EC−500)を装着し、部活動中の歩数およびエネルギー消費量を測定した。この歩数計は装着前に体重を入力することにより、歩数および正味の(安静時を含まない)エネルギー消費量を表示するものであった。測定日は典型的な練習を行なう日に設定した。実際に測定を行なうことができたのは9名であった。

3. 統計処理

本研究で得られた値を、競技レベルが中程度(東京都で128位内外)の高校(K校)および同性、同年齢の日本人の標準値7)と比較した。K校の生徒の測定値についてはすでに報告している11)。2群間の平均値の差の検定には、Studentのt-検定を用い、危険率5%未満を有意とした。

 

研究結果

小・中学生のときの運動の実施状況をB校とK校で比較したものが表1である。B校では11名が小学生からバレーボールを始め(残りの1名は水泳)、中学生では全員がバレーボールを競技として行なっていた。練習の頻度は小学生で4.5日/週、中学生で6.3日/週で、平日の練習時間はどちらも

 

 

 

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